管理人【K】の言葉

裏切ったあと、相手の不安を聞くと責められている気がする

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「今日は、誰と会うんだっけ」

玄関で靴を履いていると、パートナーに聞かれた。

前の職場の人たちと夕飯を食べる。先週、そう話したはずだった。帰る時刻も伝えてある。

「言ったよね。この前」

少し強い声が出た。相手は「そうだったね」と答え、台所へ戻った。

六十歳を過ぎた二人の暮らしには、近頃、穏やかな日も増えていた。数年前に自分が二人の約束を破ったあと、離れる話もした。それでも、話し合いを重ねて同じ家で暮らしている。

帰りが遅れるときは連絡する。尋ねられたことをごまかさない。決めたことは守ってきたつもりだった。

なのに、まだ疑われるのか。

駅まで歩きながら、その言葉が何度も浮かんだ。次には、そんなふうに思う資格が自分にあるのかと、また腹の底が重くなった。

聞かれたことより、大きな問いに答えていた

帰宅すると、パートナーは起きていた。

「さっき、言い方がきつくなった」

そう切り出すと、相手は少し間を置いて言った。

「行く人の中に、あの頃のことを知っている人がいるのかなと思って」

誰と会うかを聞かれただけだと思っていた。その言葉の後ろに、もう少し聞きたいことがあった。

自分は玄関で、今日の顔ぶれを尋ねられた瞬間に、「この数年、あなたは何も変わっていない」と言われたように感じていた。

そんなことは言っていない、と今なら分かる。それでも、あのときは、自分がしてきたことを守るので精いっぱいだった。

裏切ったあと、約束を守る日々には、もう一度安心してそばにいてほしいという願いがある。黙って続けていることにも、気づいてほしくなる。その願いが強いほど、相手の不安が、自分への落第点のように聞こえることがある。

「まだ信じてもらえない」という寂しさは、実際にある。けれど、その寂しさに押されて「これだけやっているのに」と返すと、相手は不安を話すたびに、こちらの努力を認める返事まで求められる。

そうして相手が何も聞かなくなったとき、安心したのか、聞くのを諦めたのかが分からなくなる。

今夜の自分にも、危うく見落とすところだったことがあった。相手は、出かけるのをやめてほしいとは言っていなかった。今日会う人について、知りたいことがあった。

「当時のことを知っている人がいるか、気になったんだね」

そこを確かめてから、顔ぶれと、自分の知る範囲で誰に何を話したことがあるかを答えた。相手が何を知っているかまでは、確かでない部分もあった。その部分は分からないと伝えた。

話し終えても、パートナーの表情は晴れなかった。

すぐ安心してほしい、とまた思った。でも今夜は、その返事を急かさずに座っていた。

不安が残っている会話にも、続きがある

「こういう日に、あの頃のことが戻ってくるんだよね」

しばらくして、相手が言った。

今の生活がすべて嘘だと思っている、という話ではなかった。外食の予定を聞いたときに、昔、違う説明をされていた夜が重なったのだという。

「今は連絡してくれるのも分かってる。でも、思い出した」

その二つが一人の中にあることを、自分はうまく考えられていなかった。今の振る舞いを見てもらえているなら、過去への怖さも減っているはずだと思っていた。

約束を守った事実は残る。同じように、かつて説明を信じて傷ついた記憶も残る。片方を差し出して、もう片方を終わりにすることはできなかった。

「聞かれた途端に、今までのことが全部だめだと言われた気がした。それで、答える前に怒った」

自分の中で起きたことを話した。相手に「そんなことない」と慰めてもらう言葉が続きそうになり、そこで止めた。

「さっき知りたかったことは、今の話で答えられた?」

「誰が来たかは分かった。今日は、まだ少し落ち着かない」

相手はそう答えた。

分かったと言ってから、いつものようにテレビをつけるか迷い、そのままにした。もう少し話すのか、今日はここまでにするのか。相手が考えている間を、今夜は埋めなかった。

不安を受け止めることは、あらゆる要求を引き受けることでもない。終わりなく行動を監視される、罵倒が続く、眠ることさえ妨げられる。そうした暮らしを償いとして続ければ、二人とも消耗する。聞き続けられない日は、中断と再開の時間を具体的に相談する方法もある。威圧や危険があるなら、二人だけで収めようとせず外の支えが必要になる。

そのうえで、今日の小さな問いに答える余地まで、「また過去の話か」と閉じていないだろうか。

次に身構えたとき、反省してきた年月を並べる前に、いま何を知りたいのかを一つ聞き返す。予定の確認なのか、思い出した痛みを話したいのか。初めから決めずに尋ねると、目の前の相手が話していることへ戻れる。

「今日は、もう寝ようかな」

パートナーが立ち上がった。自分も、玄関に置いたままだった鞄を片づけた。

信頼が戻ったと確かめられる夜にはならなかった。それでも、台所へ引っ込んだ人の言葉を、途中から聞くことはできた。

明日の朝、その人が安心しているかは分からない。聞きたいことが残っているなら、聞いたことで気まずくなる家にはしたくないと思った。

本文中の人物や出来事は、テーマを伝えるために構成したフィクションです。

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管理人 【K】

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