高校時代の写真を一枚送った。文化祭の看板の前で、二人とも制服の袖をまくって笑っている。
以前ならすぐに『懐かしい』と返事が来て、そこから一時間は話が続いた。今回は既読がついたまま三日が過ぎた。
その前に送った近況には、短いスタンプだけだった。
忙しいのだと思う。子どもが生まれ、仕事も変わったと聞いている。それでも、自分だけが昔の親しさへしがみついているようで、次の連絡を送れなかった。
三日の沈黙が十七歳まで戻っていく
返事がない画面を見ていると、文化祭の日まで疑わしくなった。あれほど話したのは相手が暇だったからかもしれない。自分の話は昔から重かったのかもしれない。友人だと思っていたのは自分だけだったのかもしれない。
今の返信が短いことは事実だった。そこから過去の時間まで偽物だったという結論は出ない。あの日、一緒に看板を塗り、帰りの電車で眠るまで話したことは残っている。
生活が変われば、関係へ渡せる時間も変わる。以前の親しさが本物だったことと、今すぐ返事を作れないことは同じ人の中に置ける。
返信頻度の変化で過去の友情や自分の価値まで否定しない。そう書いても寂しさは消えなかったが、昔の写真を裁判の証拠として見るのはやめた。
写真の後ろに隠していた願い
写真を送りたかった理由を考えると、懐かしさだけではなかった。本当は顔を見て話したかった。以前のように戻れるかを確かめたかった。
断られるのが怖くて、写真やニュースを送れば相手から誘ってくれると期待していた。願いを隠した連絡が流されるたび、『また自分だけ』と傷ついた。相手には、こちらが会いたいと思っていることすら伝わっていない。
そこで、一度だけ具体的に書いた。
『久しぶりに顔を見て話したい。来月の土曜か日曜に、一時間くらいお茶しない? 今は余裕がなければ、そう言ってくれて大丈夫だよ』
会いたい願いを一度だけ具体的に伝え、断る余地も渡す。送信後に何度も追いかけないことも、自分の中で決めた。
望んだ返事ではなかった
翌日の夜、返事が来た。
『誘ってくれてありがとう。今ちょっと余裕なくて、来月も難しそう。落ち着いたら連絡するね』
会う約束にはならなかった。『落ち着いたら』がいつなのかも分からない。断る余地を渡したのだから傷つかない、ということはなかった。
それでも、既読の空白だけを見ていたときより、今の相手が持てる距離は少し分かった。自分が嫌われた証明ではない。すぐ会う時間を作れない、という現在の答えだった。
そのあと一か月は連絡を休んだ。相手を試して、向こうから来るか待つ罰ではなかった。返信の印で毎日を採点していた自分の目を、少し画面から離すためだった。
今の暮らしへ話せる場所を足す
寂しい日に、旧友へ送るはずだった話を誰にも渡せないままにしていた。そこで職場の知人へ昼食を誘い、近所の読書会にも一度参加した。
新しい人で昔の友人を交換するわけではない。十七歳から知っている相手にしか話せないことはある。同時に、今の仕事や町を知る人とだけ話せることもあった。
二か月後、旧友から子どもの写真と『少し落ち着いた。来月どう?』が届いた。以前のように毎日話す関係へ戻ったわけではない。日程を決めるやり取りにも数日かかった。
会った日は、昔と同じところで笑い、知らない二年間の話も聞いた。別れ際、次の約束は決めなかった。
この先また返信が途切れるかもしれない。年に一度会う友人になる可能性もある。その変化を寂しいと思いながら、過去の時間を守り、今の暮らしにも人との時間を足していける。
文化祭の写真は削除しなかった。返事を引き出す道具から、二人が確かに同じ一日を過ごした写真へ戻っていた。
本文中の人物や出来事は、テーマを伝えるために構成したフィクションです。
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