管理人【K】の言葉

結婚を急ぐうちに、恋人との会話が面接のようになっていた

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友人から結婚式の日取りが届いた夜、真帆は恋人と会う日の予定を開いた。食事のあとに聞いておきたいことがあった。結婚の時期、住む場所、仕事を続けること。前に話したときは曖昧だったところを、今度は確かめようと思った。

付き合い始めて半年になる。来年には結婚したいと伝えてあり、彼も結婚を考えていると言っていた。それでも、友人の予定が一つ決まるたび、自分たちの話だけが進んでいないように感じた。

土曜日、料理が運ばれる前に、真帆は住む場所の話を始めた。

「結婚したら、駅から近いところがいいよね」

「僕は少し離れても、広いほうがいいかな」

また合わない。そう思った瞬間、彼の言葉の続きを待たず、「じゃあ、家賃はどれくらいまで考えてる?」と次の質問へ移った。

帰り道、聞きたかったことはずいぶん聞けた。それなのに、会う前より二人の先が見えなくなっていた。

答えが増えるほど、話せなくなった

真帆は、結婚を曖昧な期待のまま待ちたくなかった。仕事の予定もあるし、今の部屋の更新も近い。好きという気持ちだけで後回しにすると、また一年が過ぎてしまいそうだった。

聞いておく必要のあることは、たしかにある。

ただ、最近は返事を聞くたびに、頭の中で丸かばつをつけていた。丸なら次へ進む。ばつなら、その場で直してもらいたくなる。答えの理由を聞く時間が、惜しくなっていた。

彼も次第に、「真帆がいいなら、それでいいよ」と答えることが増えた。

意見が揃えば安心できると思っていたのに、その返事も心細かった。本当にそう思っているのか、話を終えたいだけなのかが分からない。希望どおりの答えが返っても、この人と暮らす実感にはつながらなかった。

早く決めたい気持ちの中には、この先も一緒にいたい願いがある。同時に、自分も決まったと周りへ報告したい焦りもある。焦るほど、相手の返事を二人で考える材料として受け取りにくくなる。予定に合うかどうかを急いで確かめるうちに、恋人が何を思い描いているのかを聞き落としてしまう。

駅からの距離を、もう一度話す

次に会った日、彼が言った。

「この前、広い部屋がいいって言いかけたんだけど」

真帆には、一戸建てが欲しいという話に聞こえていた。聞いてみると、二人とも在宅で働く日に、会議の声が重ならない場所が欲しかったのだという。彼は今の部屋で、打ち合わせがあるたびに台所へ移動していた。

「真帆は、駅が近いと何が一番助かる?」

「帰りが遅い日、駅からさらに歩くのがしんどい。前の家で、それが嫌だった」

駅の近くが好き。広い家が好き。それだけ聞けば、好みの不一致だった。二人の話には、それぞれの仕事の日が入っていた。

理由が分かったからといって、予算が増えるわけではない。駅の近さも部屋数も望めば、選べる物件は減る。真帆には長い徒歩通勤を避けたい気持ちが残り、彼にも仕事場所を確保したい事情が残った。

その日は物件を決めず、互いの通勤先までの道のりと、二人で使える間取りを一緒に調べることになった。彼は物件の図面を開いて、机をどこに置くかを話し始めた。

真帆も、自分の条件を黙って下げたわけではなかった。帰宅が遅くなる日のことを伝えたまま、彼の一日も住む場所の話に加えた。

結婚前に知りたいことには、希望が一致しているかどうかに加えて、違ったときに二人で何をするかもある。一方だけが折れるのか。理由を聞いたあとも自分の都合しか話さないのか。まだ知らないことを一緒に調べられるのか。会話の中で、返事の内容だけでは見えなかった関わり方が見えてくる。

急ぎたいことも、隠さずに

「私、来年っていう話が流れてしまうのが怖い」

図面を閉じてから、真帆は言った。友人の結婚の知らせが続いて焦っていることも話した。

彼には、部屋やお金の質問ばかりされる理由が、ようやく少し分かった。ただ、来年のいつなら動けるかは、まだ答えられなかった。その返事を聞くと、また不安になった。

話し方を変えても、望む時期が揃うとは限らない。結婚を望むか、子どもを望むかなど、理由を聞けば折り合えるとは限らない願いもある。話し合えた喜びだけで、残った違いを小さく扱うこともできない。

「来年を考えてるって、今どこまで考えてる?」

真帆が尋ねると、彼は異動の希望を出していることを話した。その結果によって、住める場所が変わるかもしれないという。次に予定が分かる日と、そのあと二人で話す日を確かめた。時期を決める相談は、まだ終わっていない。

それでも、その夜は二人とも、自分の事情を話した。

将来の質問をしているのに寂しさが増えるなら、最近答えが違った話を一つ、続きから聞いてみる。「どうしてそうしたいと思ったの?」と尋ねて、自分がその条件を望む理由も話す。条件をなくす必要はない。その条件で、どんな毎日を送りたいのかまで伝えてみる。

店を出るとき、彼が「さっきの図面、台所はちょっと狭かったね」と言った。真帆もそう思っていた。二人で料理をしたら、どちらかが冷蔵庫を開けるたびに、もう一人がよけることになりそうだった。

笑ってから、「でも、あの窓は好きだった」と真帆は付け足した。

決まらなかった項目は残っている。次に会うときには、あの窓から何が見えたらうれしいかも、話してみたかった。

本文中の人物や出来事は、テーマを伝えるために構成したフィクションです。

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